市役所にはさまざまな仕事があります。社会福祉、環境整備をはじめ、地域住民のために働くのが市役所職員です。やりがいを感じられるため人気の職業となっており、試験の難易度もそれほど高くないといわれています。ところが近年は市役所職員の採用人数が減少し、受験生の地元志向が強まっているため倍率が高くなっています。
そこで今回は、市役所のやりがいを感じる仕事や業務の内容を学んだうえで、採用試験を攻略するポイントについて解説します。
市役所の仕事内容とやりがい
市役所は仕事にやりがいを求める人にぴったりの職場です。市役所にはさまざまな業務がありますが、具体的にどのような仕事をするのか説明しましょう。市役所の仕事は大きく2つに分けられますので、それぞれの業務内容とやりがいについてもご紹介します。
一般行政職と技術職
市役所職員の仕事には一般行政職と技術職があります。一般行政職は、市民の窓口対応をはじめ、広報、年金手続き、生活保護などの福祉、地元企業の振興などを担当し、業務内容は多岐にわたります。
技術職には、建築、土木、情報、科学などの分野があり、いずれの業務も専門知識が必要とされます。
分類 |
職種 |
仕事の内容 |
必要なスキル |
一般行政職 |
窓口業務 |
戸籍、住民票、年金などの諸手続 |
特別な資格は不要ですが、市民とのコミュニケーション能力が必要 |
企画業務 |
市民向けのイベントを企画実行 |
||
産業振興 |
地元企業の振興政策、補助金申請など |
||
技術職 |
現場管理 |
建築・造園などの現場、水質検査・衛生管理などの確認やチェック |
各分野の専門知識や資格が必要。現場で知識を習得 |
トラブル対応 |
水道管破裂などトラブル被害の拡大防止、原因解明と市民への説明 |
市役所職員の3つのやりがい
市役所職員の仕事は、地域住民が快適に暮らせるようにさまざまな分野でサポートすることです。市民のために幅広い行政サービスを行います。
市役所は市民にとってなくてはならない地域の中核となる組織で、一般企業では望めない仕事のやりがいを達成できるでしょう。
やりがいの感じ方は人それぞれですが、市役所職員には主に3つのやりがいがあるといわれています。
- 市の発展や地方の活性化に貢献できる
- 仕事の結果を地域に残せる
- 住民の期待に応え、感謝される
一般行政職と技術職のやりがい
仕事の内容によってやりがいの感じ方も違ってきますが、一般行政職と技術職にもそれぞれのやりがいがあります。
分類 | 仕事のやりがい |
一般行政職 | ・窓口で直接市民をサポートできる ・市民の困り事の相談を受け、解決に導くことができる ・福祉や行政サービスの下支えができる |
技術職 | ・トラブルの防止や解消により快適な暮らしを守れる ・地域の発展や暮らしやすさを実現できる ・市民の安全を守れる |
やりがいのある仕事は生き甲斐にもつながります。ただし、市役所職員として働くためには採用試験に合格しなければなりません。
採用試験を攻略するポイントについても説明しましょう。
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市役所職員の採用試験前にチェックしたい3つのポイント
市役所の受験を決める前に、必ず確認しておくべきポイントは3つです。受験準備に欠かせない重要なポイントで、受験する市役所を選ぶ際にも大きく影響するでしょう。チェックすべき3つの重要なポイントについて解説します。
市役所の募集要項
市役所の職員採用試験は各市役所によって試験日程、試験内容、募集業種、募集人員、受験資格などが異なります。受験先を決める前に、対象となる市役所の募集要項をチェックする必要があります。
各市役所のホームページに掲載されている募集要項を見るか、不明な点は職員課や人事係に問い合わせてください。希望する業種の募集がない場合などは、受験先の市役所を変更しなくてはなりません。
併願受験は試験日程
職員採用試験を受験する方の特徴は、複数の市役所を併願受験することです。併願する場合は試験日程が重ならないように市役所を選びます。
市役所の試験は、筆記試験の日程によって概ね以下の4つに分かれています。
分類 | 試験の日程 | 備考 |
A日程 | 概ね6月第3日曜日 | 県庁所在地、政令指定都市の市役所が試験を実施 |
B日程 | 概ね7月第2日曜日 | 一般の市役所が試験を実施 |
C日程 | 概ね9月第3日曜日 | 多くの市役所が試験を実施 |
D日程 | 概ね10月第3日曜日 | 一般の市役所が試験を実施 |
上記の日程以外の試験日を設けている市役所もあるので、事前のチェックは必須です。
同じ都道府県内にある市役所は、同一日程で試験を実施する場合と、バラバラに実施する場合があります。同一日程で実施する場合は、同じ都道府県下での併願受験はできません。
また、前年(例年)と同じ日程で実施されるとは限らないので、必ず受験年の日程を確認してください。
試験内容と流れ
多くの市役所では一次試験で筆記試験、二次試験が面接や論文試験ですが、市役所によっては三次試験まで行われる場合があります。
筆記試験の内容は教養科目ですが、職種によっては専門科目が出題される場合もあります。政令指定都市の市役所(A日程)では、教養科目と専門科目の両方が出題されることが多い傾向です。
面接試験は複数回行われる場合もあり、出願する市役所の試験内容と流れの事前チェックは必要です。
筆記試験を攻略する3つのポイント
市役所でやりがいのある仕事に就くためには、まず一次試験を突破しなくてはなりません。一次試験の筆記試験は教養科目が主体です。
狭き門となった市役所の一次試験をどのように攻略すればいいのか、3つのポイントについて説明します。
教養科目は70%を目標に得点する
基本的に一次試験の教養科目は40問出題され、五肢択一で解答します。5分野20科目の中から40問出題されるため、幅広い範囲の勉強が必要です。
5分野20科目は次の表を参考にしてください。
分野 | 科目 |
文章理解 | 現代文、英文、古文 |
数的処理 | 判断推理、数的処理、資料解釈 |
社会科学 | 政治、経済、法律、時事問題 |
自然科学 | 数学、物理、化学、生物、地学 |
人文科学 | 日本史、世界史、地理、文学・芸術、思想 |
勉強方法は、すべての分野と科目を完璧にこなそうとするのではなく、まず苦手科目を克服するのがポイントです。次に、出題数の多い科目でしっかり得点できるように勉強範囲を絞り込みます。
一次試験では出題数の多い科目があるので、その科目を重点的に勉強して得点を重ねることがポイントです。市役所によって出題傾向は変わりますが、一般的に出題数が多いのは数的処理です。次に多いのが社会科学です。
一次の筆記試験は70点を目指せば突破できるといわれているので、出題数の多い数的処理と社会科学を集中的に勉強した方が合格に近付きます。市役所によって出題傾向が違いますので、事前にチェックして受験対策を立ててください。
数的処理の攻略法
数的処理には数的処理、判断推理、空間把握、資料解釈があります。これらの出題内容についてわかりやすいように表にしました。
内訳 | 内容 |
数的処理 | 中学や高校で習った数学関連の問題。場合の数、確率、方程式、速さの問題など。 |
判断推理 | クイズやパズルに近い問題(謎解きゲームの感覚)。うそつき問題や順序、位置関係、トーナメント結果の問題など。 |
空間把握 | 立体図形、展開図、切断面の把握、図形の回転など。 |
資料解釈 | 図表やグラフが用意され、選択肢から正解を選ぶ問題。割合など細かい計算が多い問題など。 |
数的処理問題を攻略するポイントは次の4つです。
パターンを覚える
市役所採用試験ではまったく新しい問題は出ないので、出題と解答パターンを覚えます。数的処理は公式や解き方の数が少ないのでパターンを覚えれば数学が苦手でも解答可能です。
数をこなす
パターンを覚えたら問題の数をたくさんこなして、スピーディーに解けるように訓練をします。
時間配分を身につける
ある程度受験勉強が進んだら、試験の時間配分をつかみます。模試を何回か受けて感覚を覚えましょう。
苦手分野は捨てる
誰にも得意分野と苦手分野があります。苦手分野を思い切って捨てて、得意分野で確実に得点することも大事です。
次項では、数的処理の次に出題数の多い社会科学問題の対策ポイントを説明しましょう。
社会科学の攻略法
社会科学問題では、政治・経済・法律・時事問題から出題されます。押さえておきたいのが新法や法改正で、前年度に制度改正が行われた場合はしっかり学習しておきます。政治・経済・法律は専門科目の出題にも重なってきますので、専門科目を勉強しながら教養科目もカバーするといった攻略法がおすすめです。
とくに重要なのは時事問題です。なぜ重要かというと、世の中の社会的な出来事や問題は自治体にとって関係のある課題が多く、対応にあたるのが市役所職員だからです。
時事問題の攻略に役立つポイントは以下の4つです。
- 毎日のニュース・新聞をチェックする
- ニュースに対する自分の意見をまとめておく
- SNSを活用する
- 白書に目を通す
ニュースで重要なのは行政の取り組み方などで、読み流すだけでなく自分なりの考え方を持つ習慣をつけてください。SNSでもTwitterはリアルタイムで時事問題をチェックできます。白書は全部読む必要はなく、概略だけに目をとおしておくと役立ちます。
やりがいのある仕事を目指すなら、時事問題対策をおろそかにはできません。
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面接試験を攻略する3つのポイント
市役所採用試験では面接試験のウェイトが高いといわれます。近年、国の地方分権改革の推進によって市役所が求める人材像が変化しており、面接試験を突破するにはその点を押さえておく必要があります。
面接試験を攻略するためのポイントを3つご紹介しましょう。
求められる人材にふさわしい受け答えを
以前は事なかれ主義といわれた市役所ですが、最近は地域の自主性や自立性をうたう自治体が増えており、求められる人材にも変化が見られます。
どのような人材が求められるのか、おもな特徴と人物像について説明します。
特徴 | 人物像 |
使命感 | 市民のために働くという積極性と使命感を持っている人 |
向上心 | むずかしい課題や前例のない問題に意欲的に取り組める人 |
コミュニケーション力 | 職員との協調性、市民との信頼性を築ける人 |
市役所が求める人材は、使命感と向上心があり、コミュニケーション力が備わった人です。面接試験での質疑応答では、この3つの特徴を意識した受け答えをします。
従来からの紋切り型の受け答えではなく、自分の言葉で意見を述べることが大事です。時事問題対策で説明したように、常にニュースや新聞に目をとおしながら自分なりの考え方をまとめる練習をしておきましょう。
面接で聞かれる定番の質問と回答例
先に説明したように求められる人材が変化しており、質問内容も変わってきています。それでも、市役所の面接試験における定番の質問は押さえておく必要があるでしょう。
おもな定番質問と回答例を6つご紹介します。
定番質問 | 回答例 |
自己PR | 自分の強みを、その根拠と体験談を交えて回答 |
志望動機 | 市役所(市民)の抱えている問題解決に貢献したいと回答 |
学生時代に学んだこと | 部活などで厳しい困難を乗り越えたエピソードを交えて回答 |
公務員に必要なこと | 市民への責任感を自覚し、最善を尽くす努力が必要と回答 |
採用後にやりたいこと | 具体的に説明して、なぜやりがいを感じるかについても回答 |
採用後の希望部署 | 配属先が希望どおりでなくても、全力を尽くすと回答 |
あくまでも回答の一例ですが、気を付けたいのは自己中心的に思われないこと、面接官の話を終わりまで聞かずに答えること、答えが短すぎる(長すぎる)ことには注意が必要です。
詳しくは「市役所面接で定番の質問内容とは?公務員採用試験を突破しよう」をご覧ください。
自分をアピールできる志望動機を作る
定番の質問にあるように、面接試験では願書に書いた志望動機を質問の参考にされることも多いです。
そのため、願書の志望動機は次のポイントを押さえて、具体的に作成しておきましょう。
1.志望する自治体の理解
その自治体が掲げているビジョンや目標、取り組んでいる施策を理解し、それに共感する部分を述べます。
2.自分の経験やスキルとの関連付け
自分のこれまでの経験やスキルが、どのようにその自治体で役立つのかを具体的に述べます。
3.将来の展望や貢献したいこと
その自治体でどのように成長し、どのように貢献したいのかを明確に述べます。
先ほどの定番の質問に繋がる文章になるので、面接の回答と齟齬が出ないように気を付けましょう。
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やりがいを掴むために市役所採用試験にトライしよう
市役所職員は市民と直結した仕事を担当しますので、やりがいを肌で感じられます。ご紹介した攻略ポイントやおすすめの問題集を活用して、ぜひ市役所の職員を目指してください。