教員採用試験では、第一次選考で筆記試験が実施されます。誰しも、合格のために自分が受験する筆記試験の内容はしっかり踏まえておきたいところ。ところが、受験する教員採用試験の種類によって出題される科目や問題の内容は異なります。そのような中、最近は文部科学省が、試験を全国で統一化するかどうか、検討する動きが出ています。受験生としては、情報がどんどん出ると、何を信じて対策したらいいのか不安になりやすいですよね。
そのため今回は、試験統一化について、なぜそのような動きが起こっているのか、受験生への影響について、また教員採用試験で出題される小論文を含めた筆記試験の科目内容について徹底解説します。
最後まで読めば、具体的にどう動き出せば良いのかがハッキリ分かるようになります。
試験統一化の背景
教員採用試験の試験統一化について、文部科学省は2024年1月31日、文科省幹部や都道府県・政令市教育委員会の担当者を集めて検討会議を開きました。
実は既にこれまでも、2015年には第2次安倍晋三政権が設置した教育再生実行会議にて提示されるなど、教員採用試験の試験統一化については課題が出されています。しかし、試験統一化することを通して新たに課題が出てくることも考えられて、なかなか本格的な検討はなされなかったようです。
それでは、なぜ教員採用試験の試験統一化の検討がなされているのか、3つ理由が挙げられます。
地域ごとの格差を無くすため
教員採用試験は自治体ごとに試験内容が異なります。地域によって試験内容や難易度が異なるため、志望自治体ごとに専用の対策が必要となります。しかしこれが受験生にとっては、地域によって試験内容が違う分、難易度の格差や、競争に偏りが出ていたことから不満の原因にもなっています。そのため、全国で試験を統一化して、平等に受験できるよう変えていく動きがでてきました。
教育委員会や教員の負担軽減のため
自治体ごとに試験内容が異なるということは、それだけ各教育員会で問題を作成するということです。しかし問題作成自体時間を要するだけでなく、会場設営などすべきことは多くあります。その負担を軽減して効率良く試験を実施するために、統一化の検討がなされています。
優秀な人材を確実に集めるため
教員採用試験は、大学4年生が受験する場合、7月から2ヶ月ほどかけて試験が行われますが、対して企業は採用がどんどん早期化されており、6月までに内々定を出すこともあります。また公務員試験も4月から行われる職種や自治体があるため、就職が決まる時期が早い方に流れてしまうという状況があります。
そのため文部科学省は、教員のなり手として優秀な人材を確保できるように、試験の前倒しを検討しています。
実際、九州では、2024年度の教員採用試験について、6月16日に1ヵ月前倒しで実施する予定であることが文部科学省より発表されています。ただし、まだ試験内容は各県それぞれのようです。
受験生への3つの影響
1.人物試験の対策の強化が必須
第一次選考の試験準備等、負担が減る分、第二次選考にあたる小論文や面接・集団討論試験に力を入れると文部科学省は示しています。
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2.地域の特性の理解度を求められる
試験が統一されることによって、違う自治体を併願しやすくなったり、対策がしやすくなることで、人物試験において競争が激化することも考えられます。志望自治体の教員になりたい理由をはじめ、地域固有の特性や求められている教師像をしっかりインプットして、試験官に「この人は何か惹かれるものがあった」と認識してもらうための十分な対策が必要となるでしょう。
3.教育実習と重なる恐れがある
教員採用試験の実施日を前倒しすることも検討されていますが、教育実習と時期が被る恐れがあります。もしそうなった場合、実習で授業準備をしながら試験対策も並行しなければならず、かなりハードになります。
ですが逆に、実習中あるいは実習修了直後だからこそ、より実感を持って教師の魅力や熱意を伝えやすくなるメリットもあるでしょう。
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教員採用試験の第一次選考の出題内容
教員採用試験の試験統一化についてみていきましたが、まだ検討段階であり、これからまた検討内容に変化も出てくるでしょう。どのような決定がなされても、志望自治体に受かる対策ができるように、最新の傾向に合わせた自治体別問題集に取り組んでいきましょう。
具体的に、教員採用試験の第一次選考では、3つの分野が出題されます。筆記試験の科目を把握して、全体像をつかみましょう。
教職教養
教職教養では、教育に関する総合的な知識と理解を求める問題が以下の科目より幅広く出題されます。
科目 | 科目の特徴や出題される内容 |
教育原理 | ・教育の原理や原則に関する分野 ・教育指導要領や生徒指導提要について出題 |
教育史 | ・教育の歴史に関する分野 ・日本教育史と西洋教育史に分かれる ・歴史上の人物や実績について出題 |
教育法規 | ・学校教育の法令に関する分野 ・法律の名称や番号、用語などについて出題 |
教育心理 | ・教育心理学に関する分野 ・心理学に関する人物や実績について出題 |
教育時事 | ・教育に関する時事的な話題 ・答申、報告書、通知などの内容や用語について出題 |
出題される内容や形式は自治体によって異なります。たとえば東京都では、共通問題と受験する教員採用試験の区分によって変わる選択問題で構成されています。
また、教職教養と一般教養のうち、出題される割合が高いのは教職教養です。たとえば千葉県の教員採用試験では、20問中教職教養90%、一般教養10%の出題割合 となっています。東京都と広島県は一般教養を採用試験にて出題していないため、教職教養100%です。
教員採用試験の第一次試験の総合得点を挙げるためには、教職教養問題への対策をしっかり行うのが重要といえるでしょう。
一般教養
一般教養では、小学校から高校までで学んだ一般常識を問う問題や、受験する自治体の地域性を問われる問題などが、以下の分野から出題されます。
科目 | 科目の特徴や出題される内容 |
人文分野 | ・国語 ・英語 ・音楽 ・美術 ・保健体育 ・家庭 |
自然分野 | ・数学 ・物理 ・化学 ・生物 ・地学 |
社会分野 | ・歴史 ・地理 ・政治 ・経済 ・倫理 |
一般時事 | ・国際情勢 ・政治 ・経済 ・社会 ・情報 ・環境 ・科学 ・文化 ・スポーツ |
ローカル問題 | ・歴史 ・教育政策 ・固有の文化 ・人口 ・面積 |
なお、一般教養の問題を設けているかは受験する自治体によって異なります。例えば東京都の「公立学校教員採用候補者選考」の第一次選考は、教職教養と専門教養のみです。
専門教養
専門教養では、以下のように教科や科目の知識、指導力を問う問題が出題されます。特に小学校は、全科目を幅広くに対策する必要があるので、対策は早めに始めると安心です。
小論文
人物重視となりつつある教員採用試験では、多くの自治体が小論文を課しています。小論文で出題されるおもなテーマは以下の通りです。
テーマの区分 | テーマの内容や求められるもの |
教師像 | ・理想の教師像、教育理念、熱意を問う |
教育論 | ・教育の現状を踏まえた課題 ・課題解決のための提案 |
生徒指導・学習指導 | ・いじめなど教育現場における問題への具体的な対策方法 |
抽象題 | ・教職とは関係のないテーマ ・発想力や文章力を問う |
教員採用試験の統一化はまだ先、志望自治体の対策を早めにスタートしよう
志望自治体の最新の情報を早めに把握すするとともに、最新傾向に合わせた自治体別問題集に取り組んで、傾向をしっかり把握し、効率の良い勉強につなげて、第一次選考突破を目指しましょう。