消防士採用試験においては、面接は最後の難関、合否を分けるというほど重要な試験とされています。消防士は人の命を預かる仕事であり、受験者が消防士としての資質があるのか、本気で続ける気があるのかなど、消防士としてふさわしい自分であるかどうかが評価されるため、面接が重要視されているのも頷けます。
心配しなくて大丈夫です。面接は筆記試験と異なり、明確な回答はないものの、評価基準を把握し対策することで合格へ近づくことが可能です。今回は、限られた時間で、消防士への熱意や消防士にふさわしい人物であることをアピールするための、面接対策について解説します。
面接は最後の難関
消防士採用試験において、面接は多くの自治体で最終試験として実施されています。人物重視の傾向があるため、面接は全ての試験科目の中でも配点が高いことが多く、最後の難関ともいえるでしょう。
消防士採用試験の面接では、筆記試験では判断できない次のような点について判断されます。
- 消防官としての適性はあるか
- 熱意や意欲があるのか
限られた時間で消防士の仕事への熱い思いを、いかにうまくアピールできるのかが合格へのカギとなります。採用試験を突破するためには、しっかりとした面接対策をしておくことが重要です。
面接では何が見られているのか
面接では、一般的に次のような項目について見られています。
- 態度(服装などの身だしなみ、積極性があるかなど)
- 表現力(話し方や声のボリューム、言葉遣いなど)
- 判断力・理解力(的確な返答ができているか、思考が歪んでいないかなど)
- 社交性・協調性(社会情勢への関心度、ルールや規則を守れるかなど)
一般的な就職試験と同じような項目についてチェックしているため、しっかりと把握しておくことが大切です。そのうえで、自信がない部分は、面接までに改善できるよう、普段から心掛けておきましょう。
面接カードの提出を求められることも
面接カードとは、民間企業でいうところのエントリーシートのようなもので、面接試験を行う際に使用する参考資料のことです。面接官が受験者の人物を見極めるために、提出を求められる場合があります。面接の前日など、短時間で記入を求められる場合があるため、あらかじめ内容を考えておくとスムーズに記入できます。
面接カードでは例として次のような項目があります。
- 面接でPRしたいことを自由に記入してください
- なぜこの職業を選択したのか
- 他の官公庁または会社の併願状況について、これから受験する予定のものを含めて、全て記入してください。
- 健康状態に関する次の項目について、具体的に記入してください。
なお健康状態については、以下のような項目が問われることがあります。
- 現在、通院治療または服薬を必要とする病気や怪我
- 薬を現在服用しているまたは過去の服用歴
- 過去の病気や怪我のために、激しい運動をすると不安と思われる病気や怪我
- 上記以外で、消防官として職務遂行や集団生活を行う上で心配なこと
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面接突破までの対策方法
面接を突破するためには、さまざまな対策が必要です。ここでは効率よく対策をするために4つのステップを解説します。
ステップ1 自己分析
面接では、自己PRや志望動機を問われるため、説得力のある回答をするためには、まず自分がどんな人間なのか、自分自身で把握しておく必要があります。そのため、まずは最初に自己分析をしましょう。自己分析とは、過去の経験や考え方などを整理して、自分の特徴を理解することです。
- 過去の経験から消防士としてどう活かすのか
- 学生時代に頑張ったこと
- 消防士に就職したいと思った理由は
- 今まで辛かったことと、それをどう乗り越えたのか
このような項目について、自問自答を繰り返すことで自己分析ができます。
ステップ2 業界研究
自己分析ができたら、「消防とは何か」という業界全体に目を向けて研究をしましょう。
- 日本の消防とはどんなものなのか
- 消防本部ごとの特徴を把握しておく
- 自分の強みを消防でどう活かせるのか
- 現実的なキャリアプランについて
消防士の仕事や組織についてしっかりと理解しているだけでなく、自分の強みもしっかりと把握しておくことが大切です。さらに、その強みを活かすためのキャリアプランまで考えておくことで、面接官の質問に対して説得力のある回答ができるようになります。
ステップ3 面接練習
自己分析と業界研究、キャリアプランなどの整理ができたら、模擬面接などで面接練習をしましょう。ひとりで練習するだけでは、言葉のキャッチボールができないため、家族や友達など周りの人に協力してもらうのがベストです。
一般的な就職試験の面接と同じように、入退室の作法や言葉遣いなど、基本的な部分は練習を重ねることで身に付けることができます。
また、面接は時間が限られているため、簡潔に話を伝えるためにも、結論から話すことが大切です。まずは、質問に対する直接的な回答を述べてから、どうしてそう思うのか理由や具体例を述べます。そして、最後にあらためて主張を繰り返して強調しましょう。
ステップ4 面接直前には身だしなみを整える
面接試験が近づいてきたら、服装や身だしなみを整えるようにしましょう。当日は、見た目で個性を出す必要はないため、一般的な就職活動と同様にリクルートスーツなどを着用するのが無難です。
ワイシャツのシワや靴の汚れ、髪型や爪の長さなど、細かな部分も一つひとつ意識して整えておきましょう。見た目でその人のイメージは大きく印象付けられてしまうため、少しでも良い印象を与えられるように、清潔感を意識して身だしなみを整えて面接本番に臨むことが合格への近道です。
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面接の6つの質問例
面接対策をするうえでも気になるのが「どのような質問をされるのか?」ですね。実際の面接で聞かれた質問を知ることで、自分なりの回答を準備しておくことができます。ここでは、過去の面接試験で質問された内容と回答のポイントをまとめました。
消防士になろうと決めたきっかけ
面接では、ほぼ間違いなく質問される内容です。警察官や自衛官、行政職や民間企業などさまざまな職種があるにもかかわらず、なぜ消防士を選んだのか、具体的にしっかりと答えることが求められます。面接カードにも記載することが多いため、整合性を持たせるためにもしっかりと考えておきましょう。
例えば、「学生のときに、消防士が学校で行った AED の講習の中で、救急救命士の仕事のビデオを見たのがきっかけです」というように、きっかけとなるエピソードを盛り込んで、具体的に話すことで説得力が増します。
なぜその自治体なのか
消防士は各自治体で採用試験が行われるため、日程が重ならなければ複数の自治体で採用試験を受けることができます。さまざまな自治体がある中で、この自治体でなければならない理由を伝えることが大切です。
地元の場合は説得力がありますが、地元以外の場合は、その自治体にはどのような縁があるのかをアピールしましょう。縁もゆかりもない自治体の場合は、その自治体ならではの特徴や魅力を回答に盛り込むなど、工夫をする必要があります。
24時間勤務も考えられるがどうか
勤務スケジュールが不規則だと、家族に苦労をかけることがあるため、家庭生活との両立が負担になる場合があります。消防士の変則的な勤務スケジュールについて理解しているかどうか、家族などのサポートが得られるかなどを確認するための質問です。
そのため、回答には、消防士の勤務スケジュールについて家族と話合いをしたうえで応募している旨を回答に盛り込みましょう。事前に対処する方法を考えていることや、家族の理解が得られていることを面接官に伝えることができます。
消防官になってからの目標ややりたいこと
この質問に対してはっきりと回答できないと、面接官に「本当に消防士が第一志望なのか?」と不安を与えてしまいます。即答できるように、入庁後のイメージをしっかりとイメージしておくことが大切です。
例えば次のように具体的な役割を回答に盛り込むとわかりやすいです。
- 救助隊になる
- 危険物のスペシャリストになる
- 大型免許を取得し、はしご車の機関員になる
規模が大きい消防本部になるほど業務の幅が広がるため、事前にどのような業務があるのかリサーチしたうえで回答を考えましょう。
〇〇市の消防のイメージ
志望している消防本部についての知識がないと答えられない質問です。事前にホームページや資料などを読み込んで、受験する消防本部についての情報をリサーチしておきましょう。各消防本部が公開している消防年報や消防白書を見ると、詳しい情報を得ることができます。
試験前には、実際に消防署にいってこっそり訓練の様子を見たり、救急講習などのイベントがあれば積極的に参加したりして消防職員と交流をしておくと、具体的なエピソードとして回答に盛り込むことができます。
あなたが理想とする消防士とは
実際の消防士がどのような役割を担っているのか調べておかないと具体的な回答をするのが難しい質問です。そのため、しっかりと業界研究をしておくことが大切になります。
そのうえで、消防士の役割や仕事内容に沿ったあなたの理想像について、抽象的ではなく、具体的な目標を加えて話すようにしましょう。消防士になってからのキャリアプランまで見据えて考えておくと、面接官にもあなたが理想とする消防士がイメージしやすいです。
消防士採用試験の傾向と対策
消防士採用試験に合格するためには、過去問などから出題傾向を分析し、しっかりと対策を練ることが重要となります。合格して消防士になるためにも、消防士採用試験の傾向と対策についておさえておきましょう。
スケジュール管理と効率のよい学習
消防士採用試験は出題範囲が広いため、ポイントを絞って学習する必要があります。目安として、全体の6~7割程度を取れるように勉強を進めていくのがポイントです。特に、数的処理や社会科学は配点が高い傾向にあるため、最優先で取り組むと良いでしょう。
ただ何となく勉強しているだけでは、効率よく勉強を進めるのが難しいです。試験の1年以上前から月単位や週単位などで、長期的に学習プランや勉強のスケジュールを立てることで、効率の良い学習ができます。
面接も重視される傾向に
人物重視で採用を決める自治体も多いため、面接試験の配点が大きくなる傾向にあります。面接試験は、筆記試験とは異なり明確な正解がありません。また、面接官を前にすると、緊張のあまりに伝えたいことをうまく伝えられず、そのまま面接が終わってしまう場合もあります。
そのため、過去の質問例などを参考にしながら、何度も繰り返してシミュレーションを重ねて慣れることが大切です。面接官の心を掴むためには、自分らしく回答できるかどうかが重要になるため、自分の言葉で伝えるためにも意識して対策をすることが大切です。
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短時間で自己アピールをするのは簡単なことではありませんが、事前に練習を重ねておけば、その成果は必ず現れます。問題集や本記事をうまく活用しながら、合格を目指してコツコツと対策しましょう。