「高校時代優しい先生と出会ってから、先生を目指すようになった」「子どもたちに関わる仕事に就きたい」と教員を志し、これから公立学校の教員採用試験にチャレンジする皆さん、やはり最初に気になるのは競争率です。
教員採用試験の倍率は、受験する学校の種類や地域によって異なります。夢を叶えるために、どの地方自治体の教員採用試験を受けるかを検討するためにも、倍率を把握したいところです。
今回は、文部科学省発表の「令和3年度公立学校教員採用選考試験の実施状況」をもとに、教員採用試験の全国の学校種類別、都道府県別の倍率と近年の推移を解説します。併願する自治体を選ぶ一つの指標にしてください。
全国の教員採用試験の倍率と推移
文部科学省では、毎年全国の地方自治体で実施している教員採用試験の状況をまとめ「公立学校教員採用選考試験の実施状況」として発表しています。「令和3年度(令和2年度実施)公立学校教員採用選考試験の実施状況」より、まずは全国の教員採用試験の倍率および近年の推移を解説します。
なお、教員採用試験の正式名称は「公立学校教員採用選考試験」ですが、本記事では「教員採用試験」に表記を統一しています。
全体の採用倍率と推移
令和2年度の教員採用試験の全体の採用倍率は、3.8倍でした。前年度の4.0倍と比較すると、0.2倍の減少となります。採用者総数は35,067人で、前年度よりも192人増加しました。一方受験者総数は134,267人で、前年度よりも3,775人減少しています。
教員採用試験全体では、倍率は近年低下傾向にあります。大量の定年退職などにより全体的な採用人数が増加したことが背景にあると分析されています。
全国の小学校の採用倍率
令和2年度の全国の小学校の教員採用試験の全体の倍率を見ると2.6倍で、前年度の2.7倍から0.1倍の減少となっています。小学校の教員採用試験の採用倍率は過去最低を更新中です。
採用者数は16,440人で、前年度よりも165人減少、受験者数は43,448人で、前年度よりも1,262人減少(新卒は80人増加、既卒は1,342人減少)しました。
小学校の教員採用試験の倍率は、採用人数の大幅な増加により今後も低下傾向と見られています。たとえば過去最高の採用倍率12.5倍を記録した平成12年度の採用人数は3,683人に対し、令和2年度の採用者数は16,440人となっています。
全国の中学校の採用倍率
令和2年度の全国の中学校の教員採用試験の全体の倍率は4.4倍で、前年度の5.1倍より0.7倍の減少となりました。
採用者数は10,049人で前年度よりも992人増加、受験者数は44,105人で、前年度よりも1,658人減少(新卒は58人減少、既卒は1,600人減少)となりました。
全国の高等学校の採用倍率
令和2年度の全国の高等学校の教員採用試験の全体の倍率を見ると6.6倍で、前年度の6.1倍より増加しています。
採用者数は3,956人で前年度よりも453人減少、受験者数は26,163人で、前年度よりも732人減少(新卒は94人増加、既卒は826人減少)しました。
中学校、高等学校の採用倍率は小学校と比較し一定の倍率を保っています。一方新卒者の受験者数が減少傾向にあります。
全国の倍率を見てみると、決して低い数字ではありませんが、対策次第では十分に突破できる倍率となっています。「教員採用試験は難易度が高い」という声がよくあがりますが、これは「近隣地区で日程が重なっていて、複数の自治体を受験することができない」という理由が挙げられます。併願するのが難しく、1本勝負というリスクを負わざるをえないという人が多いということです。
また、ライバルの中には既に何度か受験経験がある人がいます。臨時採用教員として実践経験を踏んだ上で教員採用試験に再挑戦している人も多くいます。特に近年は人物重視の傾向にあるため、臨時教員を経た受験生にとっては有利な状況に立てますが、現役生は油断のできない試験となっています。
教員採用試験は近隣地区で併願ができないように、地区ブロック単位を基本として1次試験の日程が統一されています。ただし、受験する地域に制限があるわけではないので、日程の違う地区の試験を併願して受けることは可能です。
試験会場への移動負担や、試験対策の負担が無いか、1次試験以降の日程が被っていないかなど、十分に情報収集を行った上で併願を検討しましょう。
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地方自治体別の教員採用試験の倍率
教員採用試験は、都道府県単位および一部の政令指定都市は市単位で実施しています。地方自治体の地域別に教員採用試験の倍率を解説します。なお、地方自治体別で発表されている倍率は小学校、中学校のみのため高等学校については記載していません。
地方自治体別 小学校の教員採用試験の倍率
全国の小学校教員採用試験の倍率を、地方自治体別にまとめました。
地域 |
県/市 |
倍率 |
北海道・東北地方 |
北海道 |
2.2 |
青森県 |
2.1 |
|
岩手県 |
2.3 |
|
宮城県 |
1.8 |
|
仙台市 |
3.4 |
|
秋田県 |
1.8 |
|
山形県 |
1.6 |
|
福島県 |
1.8 |
|
関東地方 |
茨城県 |
1.9 |
栃木県 |
2.8 |
|
群馬県 |
3.6 |
|
埼玉県 |
2.6 |
|
さいたま市 |
2.5 |
|
千葉県 |
2.1 |
|
東京都 |
小中一律募集のため公表なし |
|
神奈川県 |
3.1 |
|
横浜市 |
2.8 |
|
川崎市 |
3.2 |
|
相模原市 |
2.9 |
|
中部地方 |
新潟県 |
2.6 |
新潟市 |
2.4 |
|
富山県 |
1.5 |
|
石川県 |
2.5 |
|
福井県 |
3.4 |
|
山梨県 |
1.8 |
|
長野県 |
3.0 |
|
岐阜県 |
2.0 |
|
静岡県 |
2.9 |
|
静岡市 |
2.6 |
|
浜松市 |
3.0 |
|
愛知県 |
3.0 |
|
名古屋市 |
3.8 |
|
関西地方 |
三重県 |
4.6 |
滋賀県 |
2.7 |
|
京都府 |
3.6 |
|
京都市 |
4.0 |
|
大阪府 |
小中一律募集のため公表なし |
|
大阪市 |
2.8 |
|
堺市 |
小中一律募集のため公表なし |
|
豊能地区 |
3.3 |
|
兵庫県 |
4.7 |
|
神戸市 |
7.3 |
|
奈良県 |
5.1 |
|
和歌山県 |
2.8 |
|
中国地方 |
鳥取県 |
4.0 |
島根県 |
2.5 |
|
岡山県 |
4.3 |
|
岡山市 |
3.8 |
|
広島県 |
1.7 |
|
山口県 |
1.7 |
|
四国地方 |
徳島県 |
3.6 |
香川県 |
3.1 |
|
愛媛県 |
2.1 |
|
高知県 |
6.9 |
|
九州・沖縄地方 |
福岡県 |
1.5 |
北九州市 |
2.0 |
|
福岡市 |
1.9 |
|
佐賀県 |
1.4 |
|
長崎県 |
1.5 |
|
熊本県 |
小中一律のため公表なし |
|
熊本市 |
2.6 |
|
大分県 |
1.6 |
|
宮崎県 |
1.9 |
|
鹿児島県 |
2.1 |
|
沖縄県 |
4.6 |
小学校の教員採用試験でもっとも倍率が低いのは佐賀県(1.4倍)、もっとも高いのは神戸市(7.3倍)でした。
地方自治体別 中学校の教員採用試験の倍率
全国の中学校教員採用試験の倍率を、地方自治体別にまとめました。
地域 |
県/市 |
倍率 |
北海道・東北地方 |
北海道 |
4.6 |
青森県 |
5.7 |
|
岩手県 |
3.7 |
|
宮城県 |
小中一律のため公表なし |
|
仙台市 |
小中一律のため公表なし |
|
秋田県 |
3.5 |
|
山形県 |
2.8 |
|
福島県 |
4.6 |
|
関東地方 |
茨城県 |
2.6 |
栃木県 |
3.5 |
|
群馬県 |
3.8 |
|
埼玉県 |
4.3 |
|
さいたま市 |
小中一律募集のため公表なし |
|
千葉県 |
小中一律募集のため公表なし |
|
東京都 |
小中一律募集のため公表なし |
|
神奈川県 |
4.6 |
|
横浜市 |
4.9 |
|
川崎市 |
8.2 |
|
相模原市 |
3.9 |
|
中部地方 |
新潟県 |
2.3 |
新潟市 |
小中一律のため公表なし |
|
富山県 |
小中一律のため公表なし |
|
石川県 |
小中一律のため公表なし |
|
福井県 |
小中一律のため公表なし |
|
山梨県 |
5.1 |
|
長野県 |
4.4 |
|
岐阜県 |
3.1 |
|
静岡県 |
4.6 |
|
静岡市 |
3.4 |
|
浜松市 |
4.3 |
|
愛知県 |
3.9 |
|
名古屋市 |
小中一律のため公表なし |
|
関西地方 |
三重県 |
7.1 |
滋賀県 |
4.8 |
|
京都府 |
4.5 |
|
京都市 |
6.6 |
|
大阪府 |
小中一律募集のため公表なし |
|
大阪市 |
3.1 |
|
堺市 |
小中一律募集のため公表なし |
|
豊能地区 |
6.4 |
|
兵庫県 |
5.1 |
|
神戸市 |
小中一律募集のため公表なし |
|
奈良県 |
4.3 |
|
和歌山県 |
4.5 |
|
中国地方 |
鳥取県 |
4.7 |
島根県 |
4.5 |
|
岡山県 |
6.1 |
|
岡山市 |
5.5 |
|
広島県 |
2.8 |
|
山口県 |
3.3 |
|
四国地方 |
徳島県 |
4.7 |
香川県 |
4.9 |
|
愛媛県 |
3.9 |
|
高知県 |
9.5 |
|
九州・沖縄地方 |
福岡県 |
3.0 |
北九州市 |
6.0 |
|
福岡市 |
2.9 |
|
佐賀県 |
2.7 |
|
長崎県 |
3.9 |
|
熊本県 |
小中一律のため公表なし |
|
熊本市 |
5.0 |
|
大分県 |
4.0 |
|
宮崎県 |
5.5 |
|
鹿児島県 |
4.4 |
|
沖縄県 |
13.7 |
中学校の教員採用試験でもっとも倍率が低いのは新潟県(2.3倍)、もっとも高いのは沖縄県(13.7倍)でした。
教員採用試験は倍率が下がっている今がチャンス
教員採用試験は、一定の世代の大量退職や採用者数の増加、さらに新卒受験者の減少によって全体的な倍率が下がっています。
もちろん簡単に合格できる試験ではありませんが、しっかり対策をして試験に挑めば全く手が届かない倍率ではありません。倍率が低くなっている今は、教員採用試験を突破できるチャンスが大きいといえるでしょう。