教員採用倍率が低下!倍率推移と志望者増加に向けた採用側の施策

教員採用は今、受かりやすい!倍率低下の原因はこの3つ

教員採用試験の採用倍率は年々下がり続けており、自治体によっては教員の確保が急がれています。特に小学校の教員不足は深刻です。2022年の採用倍率は過去最低の2.5倍を記録しました。

「受かるチャンスが高い時代でラッキー!」と喜んでいる皆さん、なぜ倍率が下がっているのか、その背景に目も目を向けましょう。倍率の下がる背景には、社会の動きが大きく関わっているのです。

そこで今回は、教員の採用倍率低下の原因を解説します。また、国や自治体が倍率向上のために行っている施策についても後半で扱います。教員について社会的な側面も知っておくことで、面接でも教員の素質があると、好印象を与えられます。

教員採用試験の倍率は低下し続けている

机と椅子と鞄、ホワイトボードのミニチュアで作った教室の風景

文部科学省の発表によると、2022年度に実施した教員採用試験の全体の採用倍率は3.7倍と過去最低の数字となりました。小学校の採用倍率は2.5倍と過去最低の倍率となり、教員の確保が求められています。まずは2008年(平成20年)から2022年(令和4年)までの校種別の採用倍率の推移をご覧ください。

校種別の採用倍率の推移

すべての校種で下がり続けていることがわかります。

次に「小・中・高の受験者数と採用者数の推移」をご覧ください。

小・中・公の受験者数と採用者数の推移

受験者数が減少し続けていますが、嬉しいことに、採用者数は少しずつ増えているのが確認できます。この数字からもわかるように、採用倍率が低ければ合格の可能性が高いことがわかります。

文部科学省が2022年1月に発表した『「教師不足」に関する実態調査』では、小学校・中学校で1,701人(2021年5月1日時点)、高等学校で159人(2021年5月1日時点)の教員が不足しているとありました。今後、50代以上の教員が定年を迎えることもあり、教員の確保が急務です。これから教員を目指す方には、最高の時代といえます。

教員採用試験倍率の低い県・高い県

廊下に立つ1人の女性教師

上記で解説した採用倍率は、あくまで全国平均値です。文部科学省の「令和3年度(令和2年度実施)公立学校教員採用試験の実施状況のポイント」より、小学校・中学校の採用倍率の低い県と高い県を抜き出しました。

校種採用倍率が低い県採用倍率が高い県
小学校秋田県・福岡県…1.3倍高知県…9.2倍
中学校秋田県・福岡県・佐賀県…2.6倍沖縄県…10.5倍
高等学校新潟県…3.5倍沖縄県…18.9倍

採用倍率は「教員免許状を取得している人数が多い教科」など、受験者数が多い都道府県が高くなる傾向にあります。ここで、上の表の中学校について、採用倍率が低い県、高い県に挙げている福岡県と沖縄県の受験者数と採用者数を例に比べてみましょう。

県名採用倍率受験者数採用者数
福岡県2.6倍908名350名
沖縄県10.5倍944名90名

福岡県の受験者数は沖縄県より少ないものの、採用者数は約4倍です。採用者数が多ければ、それだけ受かりやすくなります。受験先の採用倍率や受験者数、採用者数を自治体のホームページで確認しておきましょう。

教員が不足している理由

黒板と教壇と机といすが並ぶ教室の風景

教員の退職をはじめ、教員が何かしらの理由で学校を離れる場合、これまでは臨時的任用職員を配置して人材の増減のバランスをとっていました。

しかし、近年は講師名簿登録者が減少したことで配置できる人材が不足しています。文部科学省の『「教師不足」に関する実態調査』によると、ほかにも以下のような理由が確認できました。

  • 産休・育休・病休の取得者の増加
  • 講師名簿登録者が他の学校や民間企業に就職
  • 定年退職者を再任用希望者が見込み数より減少
  • 特別支援学級の増加
  • 退職者の増加

講師名簿登録者を増やせば、スムーズに人材を配置できます。そのためには教員志願者を増やさなければなりません。ですがなぜ、教員になりたいと受験している人はまだまだ採用者数より多いにもかかわらず、講師名簿登録者は減少しているのでしょうか。その原因は次の3つが考えられます。

教員の労働環境によいイメージがない

国が2016年に実施した「教員勤務実態調査(平成28年度)」において、教員の過酷な勤務実態が明らかとなりました。長時間残業や無給労働など、早急な改善が求められています。

心身に不調を訴える教員も多く、休職や心の病による退職者もいることから、教員としての働き方に不安を感じている学生もいるようです。

公立学校の教員の給与や勤務条件は「教育職員給与特別措置法(給特法)」で定められており、現状を変えるには法改正が必要です。近年はSNSで現職の教員が働き方について投稿する場合があり、教員志願者である学生も目にしています。試験を受ける前にネガティブな情報にふれたことで、ワークライフバランスを保てるのか不安の声が上がっています。

正規採用者の大量採用で臨的任用職員の需要が減少

臨時的任用職員は正規教員が産休や育休、病休などで休みを取るときに代替えで入ってもらうために、講師名簿に登録されている方から選考をおこないます。しかし、採用倍率低下により採用者数が増加したことで臨時的任用職員の需要が減少しました。

待機期間が長くなると生活に支障をきたすため、自治体から声がかかる前に民間などで働き始める方もいます。実際に補助で入ってほしいときには、断られてしまうという状況が続いています。

試験が年1回しかなく出題範囲が広い

教員採用試験の出題範囲は小中高の内容をはじめ、教育法など法律関係や時事問題など出題範囲が幅広いのが特徴です。すべて網羅するには膨大な時間がかかります。しかし、教員採用試験の実施日は年1回の自治体が多く、年1回の試験に落ちてしまったら次のチャンスは来年です。

社会人など日中はお仕事をされている方は、働きながら試験対策をしなければなりません。時間的なゆとりがなく、民間企業にそのまま就職してしまう方も多くいます。

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教員採用試験の採用倍率の低下を解消するための対策

笑顔で並ぶ教師と児童

教員の志願者数を増やすために、文部科学省は「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン」を2019年2月2日に発表しました。教員の労働環境の改善に積極的に取り組んでいます。採用側となる自治体もさまざまな施策を打ち出しています。どのような施策があるのか、6つご紹介します。

募集要項発表前に説明会を実施する

自治体によっては教員の働き方に関心のある人に向けて、説明会を実施しています。11月から説明会を実施している自治体もあるため、受験先に迷っている方は気になる自治体の説明会へ参加してみましょう。

会場開催だけではなく、オンライン説明会を開催している自治体もあります。教員として働くにあたって抱えている不安の解消につながる情報が提供されていますので、ぜひ参加してみてください。

教員の魅力をSNSやWebサイトで配信

各自治体や教育委員会は、教員採用試験の概要や関連セミナーなどの情報をTwitterやFacebookなどSNSで発信しています。教員採用試験は試験内容やスケジュールが自治体ごとに異なるため、各アカウントやチャンネルをフォローしておくと便利です。東京都教育委員会や北海道教育委員会などがアカウントを持っています。「教員採用」+「自治体名」で検索をすると見つけられるでしょう。

YouTubeチャンネルでは、教員採用試験に関するPR動画を配信している自治体もあります。試験情報の配信がなくても、地域ならではの情報を確認できます。

また、自治体によっては教員の魅力を伝えるためのWebサイトを制作しています。すでに受験すると決めている方はもちろん、迷っている方にも役立つ情報が満載です。先輩の声などもまとめられているため、採用後の働き方をイメージできます。説明会やセミナーなどの開催情報や教員採用試験の実施要綱も確認できます。勉強の合間などでもチェックしやすいのも魅力です。

再挑戦しやすい体制づくり

国は既卒者が受験しやすいように、特別選考や第1次試験の免除など改善に取り組んでいます。これにより社会人から教員を目指す人の増加を狙っています。また、佐賀県では教員採用試験の夏の試験に落ちた方が、ふたたび挑戦できるように秋選考を実施しています。これは受験者数を増やすことが狙いです。意欲の高い方が挑戦しやすい環境を作っています。

臨時的任用職員をハローワークなど求人サイトで募集も始めています。教育委員会から声がかかるまで待機しなくても、自分のタイミングで臨時的任用職員に応募が可能です。

スキルアップのためのセミナーを実施

令和4年7月1日に「教育公務員特例法及び教育職員免許法の一部を改正する法律」が施行され、教員免許の更新制度が廃止されました。更新をしていない教員免許状が実質休眠状態のペーパーティーチャーも手続きなしで講師として登録ができます。安心して働けるように、セミナーを実施している自治体もあるので確認してみましょう。

また、現職の教員で上位の免許状取得に関する支援も広がっています。大学などへ行かなくても認定講習や公開講座、通信教育を受けることで希望する他の校種・教科の免許状の取得が可能です。

ICTなどを活用して教員の業務負担の軽減

教員のなり手を増やすことも大事ですが、現役の教員の働きやすさも大事です。国や各自治体は教員の業務負担を軽減するために、業務改善法案の策定やICTの導入などを積極的に進めています。そのほかにも学校閉庁日の設定や勤務時間外の問い合わせは、留守番電話や自動音声で対応できるように整備も進んでいます。

また、教員のメンタルヘルス対策に取り組んでいます。専門家による相談窓口を設置して、相談できる場所を提供しており、面接相談をはじめ、電話やメールによる相談も可能です。東京都では休職中の教員を対象に、職場復帰支援も行っています。

筆記試験免除など特例試験の設置

自治体によっては教職員の採用数を増やすために、一部試験免除や特例選考を設けています。英語の資格取得者やスポーツ・芸能の実績を持つもの、前年度の1次試験合格者が対象です。ほかにも、保有資格や貢献活動による加点制度などがあります。

多くの自治体で導入されていますが、札幌市や豊能地区、島根県などのように免除措置や加点制度、特別選考を廃止した自治体もあります。試験内容の変更点は募集要項が出るころに発表されます。受験先の自治体のホームページを確認しておきましょう。


近年の教員採用試験は筆記試験よりも、人物評価を重視する傾向があります。以下の記事では、集団討論について、実際に試験で出されたテーマ15個や、集団討論ならではの対策ポイントを徹底解説しているので、集団討論が初めて、という方にうってつけの内容です。

教員採用試験の採用倍率を目安に受験先を選ぼう

教員を目指すにあたり、理想と現実のギャップを作らないようによく情報収集しながら、自分に合った自治体を選びましょう。


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